国立病院、都立病院などで形成外科医として経験を積み、2020年より自由が丘クリニックで形成外科部長として勤務している古山恵理医師。
約3年間アメリカで生活、現地の美容医療についても学び、2024年4月帰国し診療再開。日本形成外科学会専門医、日本抗加齢医学会専門医。
夏本番。夏は爽やかに過ごしたいものの、今年も猛暑でかなり蒸し暑くなっていますね。皆様、くれぐれも熱中症にはお気をつけください。
さて、クリニックでは最近、肌のごわつきやくすみ、シミなどのご相談が増えています。紫外線やマスクの摩擦による肌のターンオーバーの乱れがそれらの原因として挙げられます。ターンオーバーが乱れると、自然と落ちていくはずの古い角質が蓄積し(角質肥厚)、シミやニキビなどのさまざまなトラブルを引き起こします。
そもそも肌のターンオーバーとはどのようなことでしょう。肌の構造から確認していきます。
肌は外側から、表皮、真皮、皮下組織の順になっています。この最外側の表皮はさらに外側から角質層、顆粒層、有棘層、基底層という4つの層に分かれます。表皮の一番奥にある肌のメイン細胞の元とも言える基底層の細胞が生まれてから、徐々に形を変えて押し上げられ、最後は垢として角質が剥がれ落ちていくサイクルがターンオーバーです。
20歳前後では28日周期で行われるこのサイクルは、30~40代になると40~60日になるとも言われるように、その機能は、加齢や紫外線などの外的要因で低下していきます。
代謝がスムーズに行われる肌はトラブルを起こしづらく、また、古い角質が取り除かれることで、日々のスキンケアも浸透しやすくなります。
自宅で行えるピーリングとしてはAHA(フルーツ酸)の成分が有名です。日々のケアで肌の古い角質を洗い流して優しくピーリングし、明るい印象の肌に整えます。
また、クリニックで行うケミカルピーリングでは、グリコール酸や乳酸、サリチル酸などの強めの酸を使用します。診察によりその患者さんに必要な種類を選択し、それらで人工的に不要な角質を剥がし、ターンオーバーの周期を整えます。
「人工的に不要な角質を剥がす」と言っても、肌への負担はほとんどありません。基本的な手順は、薬剤をやわらかい刷毛で塗り、放置後に軽く拭き取り、中和剤を塗って冷やすというものです。痛みの感じ方には個人差があるものの、基本的にはストレスなく施術を受けていただけます。
定期的に行うことで、表皮のターンオーバーが正常化し、肌のくすみを改善したり、シミを薄くしたりします。また、真皮に対してコラーゲンの新生を促す効果があると言われています。
ただ一つ注意点として、意外に知られていない事は、ピーリング後に紫外線感受性が亢進する可能性があること。ピーリングをした後は、低刺激性の化粧品や日焼け止めを使うことも重要になります。
老化の原因は遺伝子だけではなく環境の影響が75%とも言われています。日々の生活に知識をプラスすることで悩みが解決されることもありますので、皆様の選択の手助けになると嬉しいです。