「忘れ鼻」とは、顔の中で鼻だけが際立つことなく、顔全体に自然になじむ鼻のこと。
高さや幅、鼻先の向きなどを顔立ちに合わせて整え、手術を感じさせない仕上がりを目指します。忘れ鼻に求められる形やバランスと、患者さまお一人おひとりに合わせた手術の考え方を中北総院長が解説します。
「忘れ鼻」とは、顔の中でその存在が目立たず、顔全体に自然に溶け込んで見える鼻を指す言葉で、日本では昔から美人の条件の一つとされてきました。
日本人を含む東アジア人では、鼻先や小鼻の皮膚が厚くて丸みがあり、鼻筋を含めて高さよりも幅広感が目立ついわゆる団子鼻が多い傾向にあるので、鼻筋を通して全体をすっきりさせたいというニーズがあります。
しかし欧米人ほどに高くてシャープな鼻は日本人の顔の平面的な輪郭には合わず、手術によっては不自然さばかりが目立つ結果となることがあります。
それぞれの患者さまの顔のバランスに合った適度な高さや大きさに整えることにより、見る人に鼻が変わったことには気づかれず(存在を意識されず)「少し痩せた?」「なんだか綺麗になった」といった印象を与えることが多いのです。これが正に「忘れ鼻」の効果です。
かつての日本人には欧米人に対するコンプレックスがあって、高く際立つ鼻を求めて手術を受ける方が比較的多い時代がありました。近年は若者の体型や顔の輪郭がやや欧米に近づいたこともあり、そのようなニーズは減って「忘れ鼻」が最近のトレンドになっているようです。
一方アニメの影響やコスプレ感覚と思われるような、鼻を強調する手術を希望する患者さまもいらっしゃいます。
また美容外科医の中には患者さまの希望に反して鼻の存在感を強調するような手術を好んで行う医師もいるようです。
私は30年以上先天異常や美容目的での鼻の手術に携わってきましたが、始めから一貫して「忘れ鼻」を信条として取り組んできました。
患者さまのご希望は個々に異なりますし、元の状態や顔のバランスもそれぞれなので、一例一例いわゆるさじ加減を調整するのですが、決して過剰にならないこと、あくまでも自然な仕上がりであることを最も重視してきました。
そして、見る人に手術をしたことを気づかせないこと、生まれつきのような自然な美しさ「ナチュラルアピアランス」を獲得することを常に目指しています。

高さや幅、大きさに過不足がなく鼻尖の向きや鼻の長さが適切で鼻全体のバランスが良好であること、かつ顔の輪郭や目、口と調和がとれていることが基本的な条件です。
外鼻の基本構造は、頭側約半分は骨、尾側約半分は軟骨で構成されています。鼻の高さ、幅や大きさはこれらに加えて皮下脂肪や皮膚の厚みによっても影響を受けます。
ここでは鼻の部位別に、構造的特徴について解説します。
高さは鼻骨と鼻中隔軟骨、幅は主に鼻骨によって規定されます。
日本人は低くて幅が広い傾向にありますが、ハンプと呼ばれる鼻骨・鼻中隔軟骨の突出が高度になるほど(欧米人に多いタイプ)逆に高すぎて目立つ鼻になります。
高さや幅は主に鼻翼軟骨の発達度によりますが、鼻翼と共に皮膚の厚みによって大きく影響を受ける部位です。
鼻翼軟骨が小さいにもかかわらず、皮膚が非常に厚いために鼻尖が大きい場合、改善はかなり困難です。
鼻の長さが短くて鼻尖が上を向いていると(アップノーズ)、正面から見て鼻の穴(鼻孔)がとても目立ち、鼻の下が長く見える傾向にあります。
逆に鼻が長く鼻尖が下を向いている(垂れ鼻)場合は鼻が重い印象を与えます。
美しい鼻の基準の一つとして、鼻柱と鼻翼の位置関係(ACRと呼ばれる)があります。
正面から見て両側の鼻翼基部のポイントと鼻柱基部のポイントを線で結んだ時、下向きの三角形になる(すなわち鼻柱基部のポイントが下にある)のが良いとされています。
鼻柱後退があるとこの三点が一直線上に並ぶか上向きの三角形になり、鼻下部1/3領域のバランスが悪く見えます。
鼻尖と共にその大きさや幅(左右の鼻翼間距離)は鼻の存在感に大きく関わる部位です。
また東洋人には鼻翼の皮膚が厚い方が比較的多く、すっきり感を得るのを難しくしています。

幅や大きさを縮小し、必要に応じて高さや尖り感を獲得します。
まず鼻翼軟骨の部分切除で鼻尖の幅や大きさを縮小しますが、一般的に行われている切除法ではアップノーズ変形を生じやすいため、私は独自の縮小法を考案し(鼻翼軟骨の短軸方向切除縫縮法ほか)、この問題を回避しています。
一方鼻翼軟骨を縫合法で強く引き締める鼻尖縮小術も広く行われていますが、ピンチノーズ(摘まんだような不自然な鼻)を生じやすいため私は行っていません。
垂れ鼻を改善する場合には鼻翼軟骨の頭側切除を行い、軟骨間縫合で頭側に回転させます。
鼻尖をしっかり起こすための支持性を強化する目的で、左右の鼻翼軟骨の間に軟骨移植(コルメラストラット法)を行うこともあります。
高さや尖り感を得るには耳介軟骨移植を行います。高さが必要なくても丸い鼻先に尖り感が少し出ることによりすっきりした印象となります。

鼻翼の大きさや膨らみを小さくするには鼻翼基部で皮膚を少し切除して縫合します。
鼻翼幅(左右の鼻翼間距離)を縮小するには鼻孔底で適量皮膚を切除し、鼻翼を内方に移動して縫合します。
人にもよりますが、鼻翼幅縮小術を単独で行うと鼻尖が大きく見えるようになり、また鼻孔の形が悪くなることが多いので、通常は鼻尖形成術と同時に行って鼻尖と鼻翼をバランス良く縮小することをお勧めしています。

鼻筋を高くする手術で、通常はシリコンプロテーゼを使用しますが、ご希望により軟骨移植(耳介軟骨または肋軟骨を使用)でも可能です。
その場合軟骨を細かく切り刻んで筋膜か吸収性のシートに包んで移植します(細片軟骨移植法)。
高さ(厚み)の調整、特に鼻根部は額の突出度や眉間の高さとのバランス(メリハリ)が大切で、高すぎるとアバターのような不自然な外観になってしまいます。

元々鼻が短くアップノーズで鼻孔が目立つ場合、先の鼻尖形成術ではそれが強調されてしまう可能性があります。
鼻中隔延長術は鼻尖の向きを調整し、アップノーズを改善する効果に優れた術式です。
延長には軟骨移植が必要で、私は耳介軟骨を主に使用しますが、症例により鼻中隔軟骨や肋軟骨を用いることもあります。
同時に鼻柱後退を解消し良好なACRを獲得することができます。
ただし、過剰な延長は「矢印鼻」と言われる非常に不自然な外観を招き、笑ったときの表情にも悪影響をもたらすので、術中の慎重な調整が必要です。
鼻は高すぎても存在感が強調されます。欧米人ではハンプノーズ(鷲鼻)が比較的多く、高さを減じて目立たない鼻にして欲しいというニーズがありますが、日本人でも同様のお悩みで手術を希望される方がいらっしゃいます。
この様な場合にはハンプ(鼻骨・鼻中隔突出部)を切除して鼻骨骨切り術を行います。
最近では骨性ハンプを切除せずに、鼻骨骨切り+鼻中隔軟骨の高さ調整を行うこともあります(自然な鼻背構造を温存する目的です)。
鼻骨が幅広くて鼻筋の太さが目立つ場合には、骨切り術によって幅縮小を行います。
隆鼻術でも鼻筋を細く見せる効果がありますが、高くしたくない場合には骨切り幅寄せが唯一の方法となります。
このように、患者さま一人ひとりの鼻の状態や顔立ちに合わせて術式を組み合わせ、高さや幅、大きさ、鼻先の向きなどを細かく調整しながら、顔全体のバランスに自然に溶け込む「忘れ鼻」を目指しています。
大切にしているのは、鼻だけを際立たせることではなく、その方がもともと持っている顔立ちや個性との調和です。
過剰に形をつくり込むのではなく、治療したことを意識させない、自然でその人らしい美しさを引き出すことを大切にしています。
今この瞬間だけではなく、年齢を重ねてもご自身の顔立ちになじみ、自然に感じられる鼻を叶えたいという方は、ぜひご相談ください。
総院長
JC手術チーム統括責任者
医学博士
日本専門医機構認定 形成外科専門医
日本美容外科学会(JSAPS)専門医
Nobuaki Nakakita
大学病院での小児先天異常や顎変形症の豊富な手術経験を生かし、鼻や輪郭形成術、口唇裂術後の修正手術を主に担当。
患者さまお一人おひとりに丁寧に時間をかけて向き合うスタイルに全国各地から多くのお問い合わせをいただいている当院の手術チーム統括責任者。
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